蕎麦の製粉

蕎麦の花
救荒作物として知られる蕎麦は、成長の早い作物で種蒔きから2~3ヶ月で収穫できてしまいます。痩せた土地でもよく育つ蕎麦は、アレロパシーを持つと言われ、雑草の生育を抑制するので一度種を蒔けばあとはほったらかしでできてしまうのです。忍者が使うマキビシのようなトゲトゲした形の種は、そのとげの一部でも土に接すれば芽が出ると言われる程発芽率も良好です。

そして何より蕎麦は、蜜源植物としてミツバチにとってはありがたい植物なのです。ソバ蜜は、一般的なハチミツよりも鉄分やミネラル分が多く色が黒いのが特徴で近年健康食品として注目されているハチミツです。ただ味に少しクセがあるので人によって好き嫌いが分かれる蜜なのですが、ニホンミツバチのソバ蜜はほとんどクセがありません。ちなみに越冬前の貴重な蜜源であるセイタカアワダチソウの蜜もニホンミツバチのものであれば美味しく頂けます。
この味に違いは、セイヨウミツバチとニホンミツバチがもつ酵素の違いによるものです。この酵素は花の蜜であるショ糖を吸収されやすいブドウ糖と果糖に分解する際に用いられます。最終的にはこれがさらに濃縮されハチミツとなります。
刈り取り前の蕎麦
刈り取った蕎麦

ここまで書くとありがたい事だらけのようですが、何事にもメリットとデメリットがあり、それは蕎麦においても例外ではありません。種さえ蒔けばほとんど雑草管理の必要もなく収穫まで育つのですが問題はそこから先にあります。

まずは収穫なのですが、これはお米や小麦などとほとんど同じで茎の部分を鎌で刈って適当な大きさの束にします。それを雨の当たらない場所でしばらく干してから脱穀します。ここまでは米、小麦とほぼ同じなので許容範囲内です。それから唐箕にかけてある程度のゴミを飛ばしさらに乾燥させます。米、小麦の場合は、脱穀して唐箕にかけてしまえばあとはダップ機(籾すり機)を仕えばそれぞれ玄米と玄麦になります。しかし蕎麦の場合は磨きという作業をして表面の汚れを落とし、さらに水洗いをしてもう一度乾燥させなければなりません。

こうしてできた玄蕎麦をそば粉にしていくわけですが、蕎麦は米や小麦のようにはキレイに殻が取れないのです。試しに籾すり機にかけてみたものの半分ぐらいしか殻が外れず、本来殻だけが出てくる場所に籾すり中に粉になったものや欠けたものが混じってしまいうまく選別できませんでした。仕方がないので籾すり機は諦め製粉機で選別する事に。最初は粗挽きにして大きめのふるいで大まかな殻を選別し、さらにそれを細粉にして細かいふるいにかけてようやくそば粉が出来ました。

簡単に説明すると
刈り取り(鎌で手刈り)→乾燥脱穀(足踏み脱穀機)→風選(唐箕)→磨き(家庭用精米器)→洗い乾燥製粉一回目《粗め》(製粉機)→製粉二回目《細目》(製粉機)
粗めのふるい
細目のふるい
今回初めて蕎麦の調整を行ってわかった事は、茎や葉などの細かいゴミの除去が大変という事です。米や小麦は、大きなゴミさえ除去していれば最後は籾すり機でキレイに除去出来るのですが、蕎麦の場合は脱穀後に唐箕をかけただけでは除去仕切れず籾すり機もあまり役に立ちませんでした。なのでうちにある機械で何とかしようとすると脱穀後に唐箕にかけたものを精米器で磨き、さらにもう一度唐箕にかけゴミを除去し、それを水洗いして乾燥というのが一番良いのではと思います。もちろん蕎麦用の磨き機や殻剥き機や石抜き機があれば問題ないのですが・・・。
それから手持ちのふるいの目の細かさと製粉機の粒度との調整でいかにそば殻の混入率を減らせるかが質の良いそば粉にする秘訣だと思いました。
今回小袋二つの蕎麦の種を蒔いておよそ5kgほどの収穫量がありそのうち約2kgは種用に残しのこりの3kgほどを使ってそば粉にしたのですが、結局そば粉になったのはだいたい2kgでした。蕎麦が大変な理由の一つがこの歩留まりの悪さという訳です。

穀物は長期保存が可能で主食となるものですが蕎麦が米や小麦のように広く栽培されていない理由は、圧倒的な収穫量の違いに加え、収穫後の調整作業の大変さがあるのです。

収量や調整作業以外のデメリットとしては、蕎麦が雑草化してしまう事と蕎麦が持つアレロパシーの影響で他の野菜が育ちにくいというのがあります。ただそういったデメリットがあったとしてもうちの農園のような開墾したててススキなどの宿根草の根が蔓延る土地の場合、これらを抑制する目的としても非常に有用で、蜜源植物、さらには貯蔵できる食物にもなるのでメリットの大きな植物だと思います。
P.S
出来たそば粉と自家製の小麦粉を使って初めての蕎麦打ち(二八蕎麦)に挑戦してみました。ちゃんとした道具を持っていないのでかなり太めの切れ切れな麺になってしまいましたが味はなかなか美味しかったです。まぁ種蒔きからの苦労が味に加わっているのは間違いありませんが・・・(^_^;)。

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